人の少ない地球

今のように 80億人もがひしめいている地球ではなく 300年前のように 7億人しかいない地球を思う 1500年前のように 2億人しかいない地球を想像する 何百万 何千万もの人が暮らすような大都市の代わりに 30万人が暮らすノッティンガムのような街があり 秋田や 久留米や 盛岡のような街が あちらこちらにある 地球温暖化とか エネルギー枯渇といった問題はなく 十分な食糧と 十分な水が 豊かな気持ちをもたらし 悲しい争いも 無駄な諍いも 不必要な競争さえもない 君も僕も 数字で管理される家畜のような人間でなく 名前を持った 尊厳と誇りを持った 人間で ゆっくりとした時間のなかで 愛を知っている 人と人のあいだには 心地よい距離があり 動物のためのスペースと 植物のためのスペースと 水が自由に流れを変えることのできる土地がある レユニヨンやマニラにあるような交通渋滞はなく イキトスや上海にできるような長い行列もない 君とゆっくり歩いても 誰も文句を言ったりしない 人の少ない地球が 君と僕を呼んでいる 水を汲み 木苺を摘み 湖畔で腰をおろす ふたりだけになっても こわいことはなにもない